萩の漁業

山口県は、本州の最西端に位置し、北は荒しい日本海を南は穏やかな瀬戸内海と三方を海に囲まれ、昔から水産業の盛んな県として知られています。県内において萩市は、日本海に面し、島々も浮かぶその沖合いは、海底に沈んだ火山が天然の好漁場となっていて、萩のブランド魚の真ふぐ・瀬つきあじ・けんさきいか・あまだい・金太郎のほか、ウニやサザエなど250種類ほどの魚介類が獲れます。しかし、今の萩の漁業は、自然環境や担い手不足などの影響で漁獲量が減少しています。これからは獲るだけではなく、漁獲物に付加価値を考えるなど、漁師の在り方も変化してきています。

萩には有人３島を含め、１４の山口県漁業協同組合の支店があります。組合員になると漁業権を得られ、出漁（180日以上）と市場への出荷が可能となります。萩の場合、各支店とも特長があり、水揚げする魚介類や漁種という漁の方法も様々です。また、漁師には雇用型と独立型の就業があり、組合に所属している船団が雇用型で船員を募集することもあります。

近年では、萩島嶼部の大島を中心にＩターンの新規就漁者が増えています。千葉県や海のない長野県からの方もいます。はじめの一歩は、各地の就漁フェアがきっかけであったり、直接、こちらに問い合わせをいただいたりすることもあります。そして、どのような漁師になりたいのか面談の機会と一週間程度の漁業体験を設けています。その上で国や県の制度を活用し、漁師の研修生としてスタートします。数年後、漁師への自信がついてくるようになると漁船や網、竿などの道具が必要になってきますが、その際にもリースの制度があり、独り立ちできるようになるまで充実した支援があります。数年の研修期間を経て、海という自然の中で仕事ができることの満足や食材の生産者になることの喜び、そして、獲れた分が所得に繋がる達成感など、漁師のおもしろさと同時に厳しさも覚えていくそうです。ただ、その一方で、思うように魚が獲れない現実や、また船酔いや船上の人間関係など、海ゆえの厳しさを知ってリタイアする人もいます。

就漁支援以外にも萩市で住居など生活面の支援を行っています。なかでも漁業後継者育成対策事業という同支店青年部への支援があり、これはいわゆる「婚活」事業です。青年部には独身男性が多く、毎年夏に一般女性とのお見合いパーティを開催します。参加者も多く、成婚の実績もあってその時には地元のみんなで祝います。また、エリアによっては漁師の奥さんの仕事を斡旋したり、同支店女性部が小学校で魚食の普及活動をしたりと、漁業を通してまちの活性化を行っています。海や漁のまつりのときにはたくさんの大漁旗が翻り、色鮮やかに漁師まちが活気づきます。